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初期加算とは、新規利用者の受入れ直後に生じるアセスメント・計画化・初期連携・安全配慮といった立ち上げ作業の追加負担を、短期間に限って評価する加算です。
主に日中系サービスに設けられており、利用開始から暦日30日以内に上乗せする仕組みを指すケースが多いです。今回は初期加算について説明します。
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なぜ初期加算があるのか?
利用開始初期は、平時の提供以上に以下の業務が集中します。
- アセスメント(課題分析標準項目等):既往歴・医療情報・服薬・行動課題・コミュニケーション・家族背景・通学/就労状況の把握
- 個別支援計画の作成・説明・同意・交付:目標と具体的支援手段、評価指標、リスク対応を明文化
- 初期モニタリング:支援実施→記録→見直し(計画—実行—評価—改善のサイクルの立上げ)
- 関係機関連携:主治医、学校、就労先、前事業所、相談支援専門員、家族等との情報共有
- 安全管理の整備:嚥下・てんかん・行動障害・医療的ケア等の初動対応と周知
こうした初期負担を限定期間で上乗せ評価するのが初期加算です。
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対象サービスと基本構造
以下は各サービスで共通する骨格です。単位数・細目・注記はサービスごとに異なるため、各自治体の手引書等を必ず確認してください。
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生活介護
- 期間:利用開始から暦日30日以内
- 算定:上記期間に属する利用日ごとに30単位
- 要点:起算は契約に基づく初回提供日/計画の作成・同意・交付が整っていること/連携記録があること
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就労移行支援
- 期間:利用開始から暦日30日以内
- 算定:上記期間に属する利用日ごとに30単位
- 要点:アセスメントと職業準備性の評価、実習・企業連携・ハローワークとの初期連携記録、計画への反映
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就労継続支援A型・B型
- 期間:利用開始から暦日30日以内
- 算定:上記期間に属する利用日ごとに30単位
- 要点:生産活動・支援の工程設計、工賃(賃金)支払や労働安全配慮に関する初期説明と同意、配置・支援手順の整備
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自立訓練(機能・生活)
- 期間:利用開始から暦日30日以内
- 算定:上記期間に属する利用日ごとに30単位
- 要点:生活機能評価(ADL・IADL・コミュニケーション・社会参加等)と個別ゴールの設定、家族・地域資源との初期連携、安全配慮
※いずれのサービスも、「暦日カウント」が原則です。利用の有無に関わらず日数は進みます(※「体験・見学」は原則、起算対象外。契約に基づく提供開始日が起点)
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算定要件
初期加算の自己点検
- 契約書・重要事項説明の写し(利用開始日の特定が可能)
- アセスメント票(課題分析標準項目等)と根拠資料(問診、診療情報、学校等の情報)
- 個別支援計画の作成日/説明・同意日/交付日の記載
- 初期モニタリングの頻度・方法・結果
- 関係機関連携の記録(誰と・いつ・何を共有したか)
- 算定期間台帳(開始・終了日の管理、月跨ぎの自動停止設定を含む)
- レセプト摘要に期間と根拠を明示(例:「初期加算 令和7/10/1~10/30」)
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よくある落とし穴(返戻・減算の典型)
- 日数の数え方を誤る
- 「利用日ベース」ではなく、原則、「暦日ベース」。例:10/1開始→10/30までが対象、10/31は算定不可。
- 体験・見学に算定してしまう
- 原則、契約に基づく提供開始日が起点。体験日は対象外。
- 計画の同意・交付が遅れる
- 初期加算の趣旨(立ち上げ期の計画化)に反する。作成→説明→同意→交付の日付を明確に。
- 再契約・提供形態変更で“毎回”付ける
- 同一事業所×同一利用者は原則1回限り。長期中断後の再開等は通知の要件に合致するか条文確認。
- 摘要未記載
- 期間・根拠が見えないと審査で問われます。「初期加算:R7/10/1~R7/10/30」等の期間表記を徹底。
- 自動停止の設定漏れ
- 請求システムに自動停止日を登録。台帳による二重管理で過誤を予防。
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算定フロー
- 初回面談・契約(重要事項説明)
- 初回アセスメント(医療・行動・コミュニケーション・家族等)
- 個別支援計画(案)作成→説明・同意・交付
- 利用開始日をシステム登録(ここから暦日カウント)
- 対象期間内の利用日に初期加算を算定
- 初期モニタリング(週1回など所内基準)→計画見直し
- 対象期間満了の翌日から自動停止(システム+台帳で担保)
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事例で理解(生活介護のモデル)
- 10/1 契約・初回提供 → 起算
- 10/3 個別支援計画を説明・同意・交付
- 算定:10/1~10/30の利用日に初期加算(所定単位)
- 欠席:10/10が欠席でも期間は進む
- 10/31 利用分からは不可
- 摘要:「初期加算 R7/10/1~R7/10/30」と記載
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運営指導等で見られるポイント
- 整合性:契約日/初回提供日/計画作成・同意・交付日/モニタリング日の前後関係
- 記録の質:アセスメントの具体性、リスクへの初期対応、連携の実在性(誰と何を共有)
- 算定管理:起算・満了・停止の日付管理、摘要の明確さ
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まとめ(今日からできること)
- 「暦日◯◯日」自動停止を請求システムに設定し、台帳で二重化
- 初回2週間以内に計画同意・交付まで完了させる運用を所内標準に
- 摘要の定型句をチームで統一(例:「初期加算 R7/10/1~R7/10/30」)
(参考文献)
障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)
障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)