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就労選択支援は、利用者が「就労のしかた」を見定めるための短期・集中的な支援です。その運用にあたっては、アセスメント結果を根拠に特定の事業者へ過度に集中させないよう、公正性を担保する仕組みとして「特定事業所集中減算」が設けられています。今回は、特定事業所集中減算の趣旨・判定方法・手続等を説明します。
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就労選択支援と特定事業所集中減算の基本事項
- 基本報酬:就労選択支援サービス費 1,210単位/日
- 減算幅:特定事業所集中減算 200単位/日(該当期間中は一律で200単位を減算)
- 趣旨:就労選択支援のアセスメント結果を踏まえた就労系サービスの選択が、同一法人等に過度に集中することを防止し、公正性・中立性を担保するため。
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判定期間と「適用」期間
毎年度2回の判定→適用のサイクルです。
- 前期の判定期間:1月1日〜6月30日
→ 該当した場合の減算適用期間:10月1日〜翌年3月31日 - 後期の判定期間:7月1日〜12月31日
→ 該当した場合の減算適用期間:翌年4月1日〜9月30日
判定で要件に該当した場合、適用期間中の当該事業所における就労選択支援のすべてに減算が及ぶことになります。
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減算の判定はどの様に行うのか?
判定は事業所ごと・サービスごとに行います。数える対象は、判定期間にアセスメントを終了した利用者の、その後の就労系サービスの利用です。
- 対象サービス(分野別に判定)
就労移行支援/就労継続支援A型/就労継続支援B型 - 計算式(サービスごと)
「移行率最高法人につながった人数」 ÷ 「当該サービスにつながった総数」 - 判定基準
いずれかのサービスで “80%を超えた” ときに減算を適用する。
※ アセスメントは終了したが移行先未定の利用者は、その時点の判定からは除外し、決定時点の判定期間で扱います(少なくとも1年間は定期把握を続ける)。
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減算の手続について
- 届出:
前期判定分 → 9月15日まで/後期判定分 → 3月15日まで。
80%を超えた場合は、下記の内容を市町村長に提出します(80%以下でも5年間の保存義務)。- 判定期間にアセスメントを終了した総数
- サービスごとにつながった人数
- サービスごとの移行率最高法人につながった人数・当該法人の情報
- 計算割合
- 正当な理由がある場合はその内容を記載。
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減算適用除外となる正当な理由とは?
80%を超えても、「正当な理由」があれば適用除外となり得ます。通知では次のような例示があります(実際の判断は、地域事情等を含め指定権者が総合判断)。
- サービス事業所が少数の地域
事業の実施地域でサービスごとに5事業所未満など、選択肢が実質的に限られる場合。
例:移行は4事業所、A型は10事業所の地域 → 移行で80%超は減算適用外、A型で80%超は適用/移行4・A型4しかない地域 → 双方80%超でも適用外。 - 特定の支援体制加算を受けている場合
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算/高次脳機能障害者支援体制加算を受けているケース。専門的体制により受け皿が事実上限られることを踏まえます。 - 件数が少数(小規模な母数)の場合
判定期間中にアセスメントを終了し、当該サービスにつながった件数が5件未満等、統計的に集中率が高く見えやすい状況。例示も提示されています。 - サービスの質が高いこと等に基づく利用者の希望
利用者が質の高さを理由に特定事業所を希望し、支給決定権者にアセスメント結果を提出した上で意見・助言を受けている場合等。事業者側の誘導ではなく、合理的選好として確認可能なケースが想定されています。 - その他、指定権者が適切と認める場合
上記に限らず、個別事情を総合勘案して「正当」と判断される場合。
※ 上記は通知の例示です。該当可否の最終判断は指定権者。実務では根拠資料の整備(地域の事業所数一覧、体制加算の届出状況、意向確認記録・紹介状等)が重要です。
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実務で必要なこと
- 算定対象の前提:就労選択支援は直接支援(利用者が同席する会議・企業訪問等を含む)が算定対象。関係機関連絡のみなど利用者参加がない日は算定対象外。事業内容の未実施がある場合は全体として算定不可。(利用者都合の中断は除く)
- アセスメントの基本:対面を基本。多機関連携会議・結果提供・連絡調整等は、必要に応じオンライン可。
- 地域資源の把握:協議会等を通じ地域資源の情報収集に努め、利用者の希望・適性に応じ適切な情報提供を行う。
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まとめ(チェックポイント)
- 単位:1,210単位/日、該当期は200単位/日を減算。
- 判定サイクル:
前期(1/1–6/30)→適用(10/1–3/31)、後期(7/1–12/31)→適用(4/1–9/30)。 - 判定式:サービスごと(移行・就労A/B)に、移行率最高法人の割合が80%超で該当。未決定者は除外・1年把握。
- 手続:9/15・3/15までの届出・5年の保存(内容は総数・内訳・最高法人情報・割合・正当な理由)。
- 適用除外:「事業所数が少数」「体制加算」「件数が少数」「質の高さに基づく希望」「その他指定権者が認める」等、通知の例示に沿って整理・立証。
運用判断は自治体(指定権者)の取扱いに左右される部分がありますので、届出・保存書類の根拠性(裏付け資料)を丁寧に整えておくことをお勧めします。
参考資料
- 『障害者総合支援法 事業者ハンドブック(報酬編)』(中央法規)