生活介護事業所を運営されている皆さまにとって、報酬改定の内容を正しく理解し、加算を適切に算定することは、経営安定の鍵となります。
今回は、令和6年度の報酬改定を踏まえた「重度障害者支援加算Ⅰ~Ⅲ」について、対象者・要件・単位数・算定方法を具体的に解説します。
◆ 重度障害者支援加算とは?
重度障害者支援加算は、生活介護を利用する重度障がい者に対して、特に手厚い支援体制を構築している事業所を評価する目的で設けられた加算です。
令和6年度報酬改定において、支援の実態に応じて3段階の区分(加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)が整理されました。1日あたりの加算単位数は以下の通りです:
- 加算Ⅰ:50単位/日
- 加算Ⅱ:360単位/日
- 加算Ⅲ:180単位/日
それぞれの加算の対象者や要件について、順を追って解説していきます。
◆ 重度障害者支援加算Ⅰ(50単位)
【主な要件】
- 人員配置体制加算ⅠまたはⅡを算定していること
- 常勤看護職員配置加算(常勤看護職員3名以上配置)を算定していること
- 必要な生活支援員・看護職員を基準以上に配置していること
【ポイント】
- 医療的ケアニーズの高い利用者への対応を重視した加算です。
- **「重度訪問介護の支給決定」は要件ではありません。**一部で誤認されがちですが、加算Ⅰは医療的体制と人員配置で評価されます。
◆ 重度障害者支援加算Ⅱ(360単位)
【対象となる利用者】
- 障害支援区分6
- 行動関連項目の合計が10点以上
【体制要件】
- 該当者に対する強度行動障害支援計画シートの作成
- 生活支援員のうち20%以上が強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)修了者
- サービス管理責任者または生活支援員1名以上が実践研修修了者
- 必要な加配体制の整備
【ポイント】
- 強度行動障害のある利用者に対応する体制を高く評価する加算です。
- 実践研修修了者が配置されていない場合は、加算Ⅱの算定はできません。
◆ 重度障害者支援加算Ⅲ(180単位)
【対象となる利用者】
- 障害支援区分4以上
- 行動関連項目の合計が10点以上
【体制要件】
- 該当者に対する支援計画シートの作成
- 生活支援員のうち20%以上が強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)修了者
- サービス管理責任者または生活支援員1名以上が実践研修修了者
【ポイント】
- 加算Ⅱに比べ、人員要件がやや緩和されているため、まずは加算Ⅲから体制を整えていくという方法も考えられます。
- 実践研修修了者の配置は要件に含まれていません。
◆ 加算の算定方法について
加算は、対象となる利用者ごとに1日1回算定することが可能です(重複算定は不可)。
【算定例】
事業所に以下の利用者が通所している場合:
利用者 | 支援区分 | 行動関連点数 | 対象加算 |
Aさん | 区分6 | 12点 | 加算Ⅱ |
Bさん | 区分5 | 11点 | 加算Ⅲ |
Cさん | 区分3 | 12点 | 対象外 |
この場合、Aさんが通所した日は360単位、Bさんは180単位が加算されます(Cさんは対象外)。
加算は「対象者1人ごとに算定」され、加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲは重複して算定できません。
◆ よくある質問
Q:重度訪問介護の支給決定は加算要件に入っていますか?
A:いいえ。**加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲいずれにおいても、「重度訪問介護の支給決定」は要件に含まれていません。支援区分や行動関連点数、人員体制が評価対象です。
Q:加算は自動的に算定されますか?
A:いいえ。市区町村等に届出が必要です。加算要件を満たす計画書・職員配置体制・研修修了証の写しなどを用意して、算定の準備を進めてください。
◆ まとめ:加算を活用した持続可能な運営を
重度障害者支援加算は、ただの「加算」ではなく、支援の質を確保しながら事業所経営を安定させるための「投資の回収手段」とも言えます。
特に、加算Ⅲはハードルが比較的低いため、「まずⅢから、将来的にⅡへ移行」といった計画的な運用が可能です。
当事務所では、加算取得のための体制整備や届出支援、個別相談にも対応しております。報酬改定の内容を正しく理解し、貴事業所に最適な選択ができるよう、ぜひご活用ください。