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障害福祉サービス全般

【令和6年改定対応】ご利用者様とのトラブルを防ぐ!重要事項説明書と契約書の見直しポイント

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事業者様のご相談に乗る中で、最も「ヒヤリ」とする瞬間があります。それは、ご利用者様やご家族との間でトラブルが発生した際に、「契約書や重要事項説明書にどう記載されていたか」を確認するときです。

運営指導対策として書類を整備することはもちろん大切ですが、これらの書類は本来、「事業者様とご利用者様の信頼関係を守るための盾」であり、「サービスの質を保証するための約束」です。

特に令和6年度(2024年度)の報酬改定では、運営基準や重要事項説明書に記載すべき事項に大きな変更がありました。古い雛形を使い続けていると、法令違反になるだけでなく、万が一のトラブル時に対抗できなくなるリスクがあります。

今回は、最新の法改正を踏まえた重要事項説明書と契約書の見直しポイントを説明します。

目次

  1. はじめに:なぜ今、見直しが必要なのか
  2. 【令和6年報酬改定】重要事項説明書の必須変更ポイント
    • 虐待防止と身体拘束適正化の記載
    • 感染症・非常災害対策(BCP)の周知
    • 協力医療機関との連携
  3. 金銭トラブルを未然に防ぐ「実費」の明確化
  4. 現代のリスクに対応する契約書の条項
    • ハラスメント(カスハラ)対策条項の導入
    • SNS時代の個人情報保護と守秘義務
    • 損害賠償責任の範囲と免責
  5. 契約手続きのデジタル化(電磁的交付)について
  6. まとめ:書類は生き物、定期的なメンテナンスを
  1. はじめに:なぜ今、見直しが必要なのか

「創業時に作った契約書をそのまま使っている」「自治体の雛形を名前だけ変えて使っている」ということはありませんか?

障がい福祉の法律や制度は、3年に一度の報酬改定を中心に頻繁に変わります。特に令和6年度の報酬改定は、サービスの質、虐待防止、BCP(業務継続計画)策定などが義務化・強化された大きな転換点でした。

もし、現在の重要事項説明書に「身体拘束等の適正化のための指針」「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための措置」といった項目についての具体的な説明が不足している場合、運営基準違反を問われる可能性があります。

また、昨今はご利用者様やご家族様の権利意識も高まっており、曖昧な記載は即座にクレームやトラブルに直結します。「書いてある・書いていない」の水掛け論を防ぐためにも、現状に即したアップデートが不可欠なのです。

  1. 【令和6年報酬改定】重要事項説明書の必須変更ポイント

重要事項説明書は、サービスの利用開始にあたり、利用者様にサービス内容や運営方針を説明し、同意を得るための最重要書類です。特に注意すべきポイントを挙げます。

虐待防止と身体拘束適正化の記載

令和4年度から義務化が進められてきた「虐待防止」と「身体拘束等の適正化」ですが、令和6年度からは未実施の場合に基本報酬の減算という厳しい措置が設けられました。これに伴い、重要事項説明書にも以下の体制整備について明記する必要があります。

  • 虐待防止委員会の設置と開催頻度
  • 身体拘束適正化検討委員会の設置
  • 指針の整備と研修の実施

単に「虐待はしません」と書くだけでは不十分です。「どのような体制で防止に取り組んでいるか」を利用者様に説明し、安心感を持っていただく記述にしましょう。

参考資料: 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」

感染症・非常災害対策(BCP)の周知

新型コロナウイルスの経験を踏まえ、感染症対策と業務継続計画(BCP)の策定が完全義務化されました。重要事項説明書には、以下の点を盛り込むことが推奨されます。

  • 非常災害時の避難場所と避難方法
  • 感染症発生時の対応フローとサービス提供の継続方針
  • BCPに基づいた訓練の実施状況

特に「災害時にどこへ逃げるのか」「連絡はどう取るのか」は、命に関わる情報です。別紙の地図を添付するなど、視覚的にもわかりやすく説明することが、トラブル防止だけでなくご利用者様の安全確保に直結します。

協力医療機関との連携

特にグループホームや入所施設では、重度化・高齢化に対応するため、医療機関との連携強化が求められています。協力医療機関の名称、診療科目、緊急時の連携体制について、最新の情報に更新されているか確認してください。 「以前の協力医が廃業していたが、書類上はそのままだった」というケースは、緊急時に重大な責任問題となりかねません。

  1. 金銭トラブルを未然に防ぐ「実費」の明確化

ご利用者様とのトラブルで最も多いのが「お金」に関するものです。特に、給付費以外の「実費負担」については、透明性が強く求められます。

光熱水費・食費(グループホーム・入所施設等)

以前は「一律〇〇円」という徴収方法も散見されましたが、現在は「実費相当額」であることが厳格に求められています。 重要事項説明書には以下の点を明確に記載しましょう。

  1. 積算根拠: なぜその金額なのか(例:前年度の実績平均から算出等)。
  2. 精算方法: 余剰が出た場合は返金するのか、不足時は追加徴収するのか。
  3. 改定ルール: 物価高騰などで値上げが必要な場合の手続き(例:〇ヶ月前までに通知し同意を得る)。

キャンセル料の設定

急なキャンセルに対するキャンセル料の請求は、トラブルの火種になりやすい箇所です。 「利用者の体調急変」や「感染症罹患」など、やむを得ない事情の場合の取り扱いをどうするか、事業所としての方針を明確にしておく必要があります。

  • いつまでの連絡なら無料か(前日の17時まで、等)
  • キャンセル料が発生する場合の計算式(食事の実費分のみ請求するのか、サービス準備費用も含めるのか)

これらを曖昧にせず、具体的な数字と条件を記載し、口頭でも丁寧に説明することで、後々の「聞いていない」を防げます。

  1. 現代のリスクに対応する契約書の条項

重要事項説明書が「サービスの説明」なら、契約書は「法的な権利義務の合意」です。昨今の社会情勢を反映し、以下の条項を見直すことを強くお勧めします。

ハラスメント(カスハラ)対策条項の導入

近年、福祉現場でもご利用者様やご家族様からの理不尽な要求や暴言(カスタマーハラスメント)が問題視されています。職員を守ることは、結果として安定したサービス提供=他のご利用者様を守ることにつながります。

契約書の「解約条項」や「遵守事項」に、以下のような内容を盛り込む事業所が増えています。

  • 職員に対する暴力、暴言、セクシャルハラスメント、著しい迷惑行為があった場合、契約を解除できる旨の規定。
  • 信頼関係が著しく損なわれ、サービス提供の継続が困難と判断された場合の対応。

もちろん、障がいの特性に起因する行動については配慮が必要ですが、それとは区別して、職員の安全配慮義務を果たすための条項が必要です。

参考資料: 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」 ※障害福祉分野でも同様の考え方が適用されます。

② SNS時代の個人情報保護と守秘義務

スマートフォンの普及により、利用者様同士、あるいは利用者様が職員や他の利用者の写真をSNSに投稿してしまうトラブルが発生しています。 従来の個人情報保護規定に加え、以下の視点を盛り込みましょう。

  • 施設内での撮影・録音のルール
  • 他の利用者や職員のプライバシーに関する情報をSNS等に投稿しないことの誓約

これを重要事項説明書の説明時に併せて伝えることで、デジタルタトゥー等の深刻なトラブルを予防できます。

損害賠償責任の範囲と免責

事故が起きた際の損害賠償について、「事業者に故意または過失がある場合」に限られるのか、不可抗力の場合どうするのかを明確にします。 全てを「事業者の責任」としてしまうと、予測不能な突発的な行動による事故や、災害時の損害まで補償することになりかねません。

  • 事業者が賠償責任保険に加入していること。
  • 賠償の範囲は、事業者に法的責任が認められる場合に限ること。

これらを明記し、適切な線引きを行うことが重要です。

  1. 契約手続きのデジタル化(電磁的交付)について

令和3年度の報酬改定以降、重要事項説明書や契約書の「電磁的交付(データでの提供)」「電子署名」が可能になっています。

紙での保管は場所を取りますし、紛失のリスクもあります。また、ご家族が遠方に住んでいる場合、郵送でのやり取りは時間がかかります。 タブレットを用いた対面での電子サインや、クラウドサイン等のサービスを活用することで、以下のメリットがあります。

  • 業務効率化: 製本や郵送の手間削減。
  • コンプライアンス強化: 署名漏れや紛失の防止。契約締結日のタイムスタンプが残るため証拠能力が高い。

ただし、デジタル化を行う場合は、事前にご利用者様やご家族様の「承諾」を得ることが必須要件です。「電磁的方法による提供に関する同意書」等を別途取得するフローを忘れずに構築してください。

参考資料: 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等における生産性向上推進の取組」

  1. まとめ:書類は生き物、定期的なメンテナンスを

ここまで、重要事項説明書と契約書の見直しポイントについて解説してきました。

契約書や重要事項説明書は、一度作れば終わりの「静的な文書」ではありません。法改正、社会情勢の変化、そして自事業所のサービス内容の変化に合わせて成長させていくべき「生き物」です。

しっかりとした書類を作ることは、決して「事業者様の自己保身」だけではありません。 「私たちは、ルールを守り、誠実に、責任を持ってあなたを支援します」という、利用者様への最大のメッセージになります。

曖昧な契約書は、双方の解釈のズレを生み、それが不信感やトラブルにつながります。逆に、細部まで詰められた明確な契約書は、プロフェッショナルとしての信頼感を醸成します。

今すぐできるアクション

まずは、お手元の重要事項説明書と契約書を広げ、以下の3点だけチェックしてみてください。

  1. 「令和6年度報酬改定」の内容(虐待防止、BCP、協力医療機関等)が反映されているか?
  2. 実費(光熱費・食費等)の金額や精算方法は現状と合致しているか?
  3. 「ハラスメント」や「SNS利用」など、現代的なトラブルに対応できる条項があるか?

もし不安な点があれば、お近くの行政書士や、自治体の指定権者(福祉指導監査室など)に相談することをお勧めします。自治体のホームページには最新の「モデル様式」が公開されていることが多いので、まずはそれをダウンロードして比較するだけでも、多くの気づきがあるはずです。

皆様の事業所が、書類という基盤を整えることで、より安心して質の高い支援を提供できる環境になることを、心より願っております。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的効力を保証するものではありません。具体的な書類作成にあたっては、各指定権者の条例や指導方針をご確認のうえ進めてください。

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