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居宅訪問型児童発達支援は、「通所が難しい重い障がいのあるお子様」に対して、自宅や入所施設等に専門職が出向いて支援を行うサービスです。通所系サービスの中でも、特に専門性と継続性が求められる分野といえます。
この様な性質を踏まえ、報酬体系では「訪問支援員特別加算」により、一定の経験年数と専門性を備えた職員による訪問を評価しています。令和6年度報酬改定では、この加算が(Ⅰ)・(Ⅱ)の2区分に整理され、経験年数に応じた評価へと見直されました。
今回は訪問支援員特別加算のポイントを制度の概要を押さえつつ、実務で迷いやすい「経験年数のカウント」や「どの職種が対象になるのか」といった点も、できるだけ平易にお伝えします。
目次
- 訪問支援員特別加算とは
- 対象となるサービスと位置づけ
- 算定単位と令和6年度改定の内容
- 訪問支援員特別加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件
- 実務上のポイント(経験年数の整理など)
- 他の加算との関係と算定イメージ
- まとめ
対象サービス名
訪問支援員特別加算の対象となるサービスは、次のとおりです。
- 居宅訪問型児童発達支援
通所による支援が著しく困難な重度の障がい児等に対し、居宅等を訪問して発達支援等を行うサービス。 - (参考)保育所等訪問支援
保育所や学校等を訪問し、集団生活の場での支援を行うサービスでも、同趣旨の「訪問支援員特別加算」が設けられています。
算定加算単位
居宅訪問型児童発達支援・訪問支援員特別加算の単位数(令和6年度)
| 区分 | 内容イメージ(後述) | 単位数 | 算定頻度 |
| 訪問支援員特別加算(Ⅰ) | 経験がより豊富な訪問支援員 | 850単位 | 1日につき |
| 訪問支援員特別加算(Ⅱ) | 一定の経験を有する訪問支援員 | 700単位 | 1日につき |
1.訪問支援員特別加算とは
(1)加算のねらい
訪問支援員特別加算は、在宅で生活する重度の障がい児に対し、経験豊富な専門職が継続的に関わる体制を評価するための加算です。
厚生労働省の資料では、居宅訪問型児童発達支援の主要な加算として、従来から「訪問支援員特別加算」が位置づけられており、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・保育士・看護職員等として一定期間従事した者や、障がい児の直接支援・相談支援業務に長期に従事した者を評価する仕組みであることが示されています。
令和6年度改定では、このねらいをさらに明確化し、
- 訪問支援員を単に配置しているだけでなく、その職員が実際に訪問支援を行っていること
- 経験年数に応じて、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分に分けて評価すること
が打ち出されています。
(2)どんな場面で算定するのか
こども家庭庁長官が定める基準に適合する者(訪問支援員)を1名以上配置している居宅訪問型児童発達支援事業所が、その訪問支援員により支援を行った日に、当該区分(ⅠまたはⅡ)に応じて、1日につき加算する。
つまり、
- 基準に合った「訪問支援員」の配置
- その訪問支援員が実際に訪問に出て支援を行っていること
の2つが揃ってはじめて算定できる加算と整理すると分かりやすいと思います。
2.対象となるサービスと位置づけ
(1)居宅訪問型児童発達支援の概要
居宅訪問型児童発達支援は、たとえば次のようなお子様を対象とします。
- 重症心身障がいがあり、通所での移動自体が大きな負担となるケース
- 医療的ケアの必要性が高く、送迎・通所が困難なケース
- 行動上の課題等により、集団場面での支援が難しいケース など
(2)保育所等訪問支援との共通点
保育所等訪問支援においても、保育所や学校等を訪問する専門職の経験を評価する「訪問支援員特別加算」が設けられており、令和6年度改定では居宅訪問型と同様の考え方で見直されています。
両サービスとも、「子どもの普段の生活の場に専門職が出向く」という共通の特徴があり、その質の確保のために同じ考え方の加算が設定されていると理解すると良いと思います。
3.算定単位と令和6年度改定の内容
(1)単位数の水準
先ほどの表のとおり、訪問支援員特別加算の単位数は、
- Ⅰ:1日につき 850単位
- Ⅱ:1日につき 700単位
と、決して小さくない水準が設定されています。
従来も679単位という比較的大きな評価でしたが、令和6年度改定で経験年数を踏まえた2区分に再編され、より経験豊富な訪問支援員を位置づけるインセンティブが強まりました。
(2)「配置」から「実際の支援」へ
改定のポイントとして、厚生労働省の資料では、訪問支援員を配置しているだけでなく、その職員が実際に訪問支援を行うことを要件とすることが明記されています。
実務的には、
- 訪問支援員が同行しない訪問日には、本加算は算定できない
- 一方で、複数の訪問先を同日に回る場合であっても、要件を満たす範囲であればその日の支援について加算算定が可能となっています。
4.訪問支援員特別加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件
(1)共通する基本イメージ
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
- 保育士・児童指導員等
- 看護師・准看護師
- 児童発達支援管理責任者、サービス管理責任者、心理指導担当職員 など
これらの資格者であって、障害児通所支援事業や障害児相談支援事業等における一定期間の実務経験を有することが求められます。
(2)訪問支援員特別加算(Ⅰ)
令和6年度改定後の訪問支援員特別加算(Ⅰ)では、おおむね次のような水準の経験が求められます。
- 障害児支援に関する業務に 10年以上 従事した者
または - 保育所等訪問支援や居宅訪問型児童発達支援など、「訪問支援」に関する業務に 5年以上 従事した者
といった形で、より長期間の実務経験を評価しています。
(3)訪問支援員特別加算(Ⅱ)
- 障害児支援業務の経験が 5年以上10年未満
または - 訪問支援業務の経験が 3年以上5年未満
といった、一定の経験を積んでいるが、まだⅠの水準には達していない職員を評価しています。
(4)経験年数の数え方のポイント

経験年数については、厚生労働省や自治体の資料で、他の加算と同様に次のような整理が示されているケースが多いです。
- 「資格取得前」の児童福祉事業の経験も含めることができる場合がある
- 非常勤・短時間勤務であっても、一定の換算を行って通算年数に含めることができる
- 複数の事業所での経験を合算できるが、同一期間に複数の事業に従事していた場合は二重計上は不可
具体的な取り扱いは、自治体のQ&Aや集団指導資料でも補足されますので、届出の際には必ず所轄自治体の案内を確認してください。
5.実務上のポイント
(1)届出前に確認しておきたいこと
訪問支援員特別加算を算定するには、原則として「基準に適合する訪問支援員を配置している」旨の届出が必要です。
届出前に、次の点を整理しておくとスムーズです。
1.対象となる職員の資格・職種
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、保育士、児童指導員等のうちどの区分に該当するか。
2. 障害児支援・訪問支援に関する従事期間の一覧
事業種類ごと、在籍期間ごとの一覧を作成し、重複期間がわかるようにしておく。
3.ⅠとⅡのどちらに該当するかの判定
経験年数を通算し、要件を満たす区分を整理する。
(2)日々の記録の残し方
算定後の運営指導を見据えると、「どの日の訪問を、どの訪問支援員が担当したか」を、実績記録票や勤務表等で紐付けておくことが重要です。
- 予定表と実績表が食い違っている
- 訪問支援員が欠勤・代行だった日の扱いが曖昧
といった点は、指摘を受けやすいところです。支援記録の様式を見直し、「訪問支援員特別加算の担当者」が分かる欄を設けておくと安心です。
6.他の加算との関係と算定イメージ

訪問支援員特別加算は、あくまで基本報酬に「上乗せ」される加算です。
居宅訪問型児童発達支援では、このほかにも
- 家族支援加算
- 初回加算
- 各種処遇改善加算 など
複数の加算が組み合わさって報酬が構成されています。
例えば、次のようなイメージです(あくまで構造イメージ)。
1日の基本報酬
+ 訪問支援員特別加算(ⅠまたはⅡ)
+ 家族支援加算
+ 処遇改善関係の加算 …… 等
「どの加算を取りに行くか」は、事業所の人員体制・提供している支援の内容・職員の経験年数などを踏まえて検討することになりますが、訪問支援の中核となる人材を中長期的に確保するうえで、訪問支援員特別加算は重要な選択肢といえます。
7.まとめ
- 居宅訪問型児童発達支援における訪問支援員特別加算は、経験豊富な専門職による訪問支援を評価する加算です。
- 令和6年度改定で(Ⅰ)(Ⅱ)の2区分となり、経験年数に応じて 850単位/700単位 が1日につき加算される仕組みとなりました。
- 算定には、こども家庭庁長官が定める基準に適合する訪問支援員の配置と、その職員による実際の訪問支援の実施が必要です。
- 経験年数のカウントや対象職種の判定は、厚労省通知・自治体の集団指導資料等を突き合わせながら慎重に整理することが重要です。
居宅訪問型児童発達支援は、事業者側にも高い専門性が求められるサービスですが、その分、適切な加算の活用によって体制整備や人材確保に結び付けることも可能です。
制度の細かな解釈や届出書の書き方などで迷われた場合は、所轄自治体の担当部署や、制度に詳しい専門職に相談しつつ、無理のない範囲で加算活用をご検討いただければと思います。
(参考文献)
障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)
障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)
(参考資料)