障害児通所支援

児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所を開設する際の物件選びのポイントとは?

児童発達支援および放課後等デイサービスは、発達に支援が必要な子どもたちの成長を支える大切な福祉サービスです。これらを一体的に提供する「多機能型事業所」の開設を検討している方にとって、最初の大きなハードルとなるのが適切な物件選びです。物件の選定次第で、利用者の満足度やスタッフの働きやすさ、さらには行政からの指定取得のスムーズさまで大きく左右されます。

今回は、児童発達支援と放課後等デイサービスを一体で行う多機能事業所を開設する際の物件選びにおけるポイントを説明します。

  1. 立地の重要性

利用者のアクセスを第一に

児童発達支援や放課後等デイサービスの対象は未就学児から小・中・高校生までと幅広く、保護者の送り迎えや送迎車の利用が前提となる場合が多いです。そのため、以下のような立地条件が望ましいです。

  • 住宅地に近い場所(利用者が多い地域)
  • 駅から徒歩圏内、または幹線道路に面したアクセスの良い場所
  • 送迎車の出入りがしやすい道路状況と駐車スペース

特に送迎車の駐車や乗降がスムーズに行えるかどうかは、トラブルを防ぐ上でも非常に重要です。前面道路の幅や交通量、駐車場の有無などを確認しましょう。

  1. 建物の構造・間取り

面積要件を満たすことが大前提

児童発達支援・放課後等デイサービスは、厚生労働省が定める最低基準を満たす必要があります。たとえば、以下のような条件があります。

  • 発達支援室として児童1人あたり2.47㎡以上(指定権者により差があり)が必要
  • 相談室、事務室、静養室の設置
  • トイレや手洗い場の数と配置(子ども用・職員用)

そのため、最初からこのような構造に対応可能な物件を選ぶか、改装がしやすい物件を選定することが重要です。中古戸建てや元店舗、事務所をリノベーションして開設するケースも増えていますが、改装工事費が想定以上になることもあるので、内見の段階で専門業者と同行するのもおすすめです。

 

  1. バリアフリー対応

児童発達支援では、障がいのある未就学児が対象となるため、バリアフリー対応は不可欠です。

  • 段差のない玄関・廊下
  • 車椅子が通行可能な幅の通路
  • トイレの手すり、スペースの広さ
  • 視覚・聴覚支援のための工夫

特に、古い物件や2階以上のフロアを使用する場合は、エレベーターの有無や導線の安全性を入念に確認しましょう。これらの配慮が足りないと、指定申請で却下されることもあります。

  1. 近隣環境と騒音対策

近隣トラブルを未然に防ぐために

子どもたちが元気に活動する施設であるため、ある程度の騒音は避けられません。開設後に近隣住民から苦情が来ることもありますので、事前に以下の点をチェックしましょう。

  • 周囲が住宅街過ぎないか(騒音に敏感なエリア)
  • 施設の隣接地が事業施設や店舗ならベター
  • 建物自体の防音性(壁の厚さ、窓の構造)

また、開所前には近隣住民への説明会やあいさつ回りを行うことで、理解を得やすくなります。地域との関係性は、施設運営の安定にもつながります。

 

  1. 行政・消防・建築基準への適合

開設許可を得るための重要ポイント

物件選びにおいて見落としがちですが、以下の点を事前に確認しておかないと、後から大きな問題になることがあります。

  • 都市計画法上の用途地域の確認(福祉施設が設置可能か)
  • 建築基準法に基づく耐震性や建物用途
  • 消防法上の要件(避難経路、消火器、火災報知機の設置など)

これらに適合していない場合、開設自体ができないこともあるため、行政や建築士に事前相談することが非常に重要です。

  1. 契約条件と賃料の妥当性

物件選定では、単に「借りられるかどうか」だけでなく、長期的に安定して運営できるかという視点も欠かせません。

  • 賃料は事業計画に無理のない範囲か
  • 事業用としての使用が可能か(住居専用不可の場合も)
  • 契約期間・更新条件・原状回復義務などの確認

また、指定申請の審査期間中(2〜3か月)は収入が発生しないため、その間の賃料支払いについても考慮して資金計画を立てる必要があります。

まとめ:物件選びは「未来の運営」を見据えて

児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所は、子どもたちの笑顔と成長を支える大切な場所です。その“舞台”となる物件の選定は、単なる空間探しではなく、安心・安全・快適な環境を提供する第一歩でもあります。

立地、構造、周辺環境、法的要件、契約内容など、検討すべき点は多岐にわたりますが、それぞれを丁寧に確認することで、トラブルを防ぎ、スムーズな開設と運営につながります。

これから事業をスタートする皆さまが、理想の物件と出会い、地域に根ざした素晴らしい施設を作り上げていくことを願っています。

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