就労選択支援

【就労継続支援B型事業者様向け】「就労選択支援」に取り組むべきか?判断材料と制度の全体像

はじめに

2025年10月から始まる新たな障害福祉サービス「就労選択支援」。
厚生労働省の有識者会議で制度設計が進み、2024年度の報酬改定にもその準備的な内容が盛り込まれました。

就労継続支援B型(以下、B型)を運営されている事業者の皆さまの中には、

  • 「うちでも始められるだろうか?」
  • 「うちの利用者には関係ないのでは?」

といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、「就労選択支援とは何か?」という制度の基本から、B型事業者様が自施設で取り組むべきかどうかを判断するためのポイントまで、客観的かつ実務に役立つ形で説明します。

 

「就労選択支援」とは?

  • 制度の概要(2025年7月時点)
項目 内容
目的 障害者が就労移行支援等への進路を選ぶ前に、希望や適性の整理を行うための短期支援
支援内容 アセスメント、職業体験、進路相談、関係機関との連携など
対象者 障害福祉サービスの新規申請者で、将来的に就労を希望する方
支援期間 原則1か月間(必要に応じて延長可)
実施事業者 就労系サービス事業者(B型や就労移行など)で実施可能と想定

※出典:厚生労働省「障害者総合支援法の見直しに係る有識者会議」第9回論点整理資料(2025年5月)

 

 

現行B型利用者との関係は?

「就労選択支援」は、あくまでも**これからサービス利用を申請する方の“入口となる短期支援”**であり、現在B型を利用中の方が切り替える制度ではありません。

ただし、今後B型の新規利用者がいったん就労選択支援を経て来るケースが増える可能性があり、制度施行後は間接的な影響を考慮する必要があります。

 

B型事業所にとっての期待・メリット

1.“支援の見える化”と制度的評価

従来評価されにくかった支援(職業体験・アセスメント・履歴書指導等)が制度化の対象となり、正式な報酬枠として認められる可能性があります。

 

2.新たな利用者流入経路の形成

「まず就労選択支援 → B型」という流れになれば、新たに問い合わせや利用につながる可能性が生まれ、支援対象の裾野が広がることも期待されます

 

 

B型事業所にとっての懸念点・リスク

1.対象者は“新規利用者”限定

既存の利用者には影響せず、制度を導入しても現利用者へのサービス充実とは直結しません

 

2.専門的支援に伴う実施負担

アセスメント、職場体験、進路相談など内容が高度で、人員配置やスキル双方に対する負担が想定以上に大きい可能性があります。

 

3.特定事業所集中減算のリスク

就労選択支援後に同法人系列の事業所へ利用者を誘導すると、「特定事業所集中減算」の対象になるおそれがあります。
透明性ある運営と支援記録の整備が今後の実地指導等で重要です。

 

 

自施設での導入検討のためのチェックポイント

以下項目を踏まえて、制度導入の可否を検討するとよいでしょう。

 

🔍人材体制と支援経験

  • 就労支援経験を持つ職員がいるか
  • 面談・進路相談の実績はあるか
  • 企業開拓や職場体験のネットワークがあるか

 

🔍地域連携体制

  • 地域に就労移行やA型など連携可能な事業所が存在するか
  • ハローワークや企業との関係構築があるか
  • 地域の就労支援ネットワークに参加しているか

 

🔍経営方針との整合性

  • 多機能型(移行+B型)など将来展望と合致しているか
  • 人員・施設資源に余力があるか
  • 地方自治体への制度的対応が可能か

 

 

結論:B型全体での参入は必須ではない

就労選択支援は対象や目的が明確な専門性の高い短期支援制度です。
そのため、すべてのB型事業所が参入すべきではなく、各事業所の事情に応じた判断が求められます。

選択と集中が重要です:

  • 支援力や地域連携体制が整っているなら→ 前向きに検討
  • 経営資源が限られているなら→ 無理せず、現サービスに注力

 

参考資料(最新の確認先)

  1. 厚生労働省「障害者総合支援法の見直しに係る有識者会議」第9回 論点整理資料
  2. 厚生労働省・こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」

 

関連記事

最近の記事
  1. 【就労継続支援B型事業者様向け】「就労選択支援」に取り組むべきか?判断材料と制度の全体像
  2. 就労選択支援の指定申請手続きについて
  3. 児童福祉施設における採光・換気基準について