訪問系サービス

訪問系サービスにおける特定事業所加算とは?

訪問系サービス事業所が提供するサービスの質を評価し、適切な報酬を得るための制度として「特定事業所加算」があります。​この加算は、事業所の体制や人材育成、重度要介護者への対応能力など、一定の要件を満たすことで算定されます。​令和6年度の報酬改定により、加算区分がⅠからⅤまでの5段階に再編され、それぞれに異なる要件が設定されています。​今回は特定事業所加算の概要と、各区分の要件について説明します。​

特定事業所加算の概要

特定事業所加算は、訪問介護事業所が質の高いサービスを提供するための体制を整備していることを評価する制度です。​加算区分は以下の通りです。

  • 加算Ⅰ:20%
  • 加算Ⅱ:10%
  • 加算Ⅲ:10%
  • 加算Ⅳ:3%
  • 加算Ⅴ:3%(他の加算と併算定可能)​

加算Ⅴは、加算Ⅰ~Ⅳそれぞれとあわせて算定することが可能です。

加算区分ごとの要件

特定事業所加算の要件は、主に以下の3つのカテゴリーに分けられます:​

  1. 体制要件
  2. 人材要件
  3. 重度要介護者対応要件

加算区分ごとに、これらの要件をどの程度満たしているかによって、加算の取得が可能となります。​

  1. 体制要件

体制要件は、事業所の運営体制やサービス提供体制に関する要件です。​以下は、全ての加算区分に共通する主な体制要件です:​

  • 計画的な研修の実施:​すべての訪問介護員・サービス提供責任者に対し、個別の研修計画を作成し、計画に従い研修を実施していること。​
  • 定期的な会議の開催:​利用者情報やサービス提供に関する情報共有のため、定期的に会議を開催し、その概要を記録していること。​
  • 情報伝達と報告体制の整備:​サービス提供責任者と訪問介護員等との間で、文書等による指示およびサービス提供後の報告が行われていること。​
  • 定期健康診断の実施:​すべての訪問介護員等に対し、少なくとも1年に1回、事業主の費用負担で健康診断を実施していること。​
  • 緊急時等における対応方法の明示:​緊急時の対応方針や連絡先、対応可能時間帯等を記載した文書を利用者に交付し、説明していること。​

加算Ⅴに関しては、これらの体制要件を満たすことが求められます。​

  1. 人材要件

人材要件は、サービス提供責任者や訪問介護員の資格や経験に関する要件です。​加算区分ごとに求められる人材要件は以下の通りです:​

  • 加算Ⅰ:​サービス提供責任者が、介護福祉士等の資格を有し、一定の実務経験を持っていること。​
  • 加算Ⅱ・Ⅲ:​サービス提供責任者が、介護職員初任者研修修了者等の資格を有し、一定の実務経験を持っていること。​
  • 加算Ⅳ・Ⅴ:​特に人材要件は設けられていませんが、適切な研修の実施や情報共有体制の整備が求められます。​

また、新規に採用した訪問介護員に対しては、サービス提供責任者等が同行して研修を実施する体制を整備していることも要件の一つです。​

  1. 重度要介護者対応要件

重度要介護者対応要件は、重度の要介護者に対するサービス提供体制に関する要件です。​加算区分ごとに求められる要件は以下の通りです。

  • 加算Ⅰ:​重度の要介護者に対するサービス提供実績が一定以上あり、適切な対応が行われていること。​
  • 加算Ⅱ・Ⅲ:​重度の要介護者に対するサービス提供実績があり、適切な対応が行われていること。​
  • 加算Ⅳ・Ⅴ
    重度要介護者対応について、明確な数値的要件は設けられていませんが、以下のような姿勢が求められます。

    • 利用者の状態像(要介護度3~5、認知症高齢者、独居高齢者等)に対応したサービス提供体制を整えていること
    • ケアマネジャーや他サービス事業所との連携を密にし、適切なサービス調整が行われていること

加算Ⅰ~Ⅲでは、「要介護度3以上の利用者が一定割合以上いること(重度者割合)」が求められるため、重度者対応の実績が加算取得における重要なポイントになります。

加算の取得戦略とポイント

特定事業所加算の取得には、単に制度上の要件を満たすだけでなく、運営の質そのものを高めていく姿勢が必要です。

以下のようなポイントを押さえると、加算取得および維持につながりやすくなります:

  1. 記録とエビデンスの徹底

すべての加算に共通して言えることですが、「実施している」だけでなく、「実施した証拠」があることが重要です。研修計画、会議記録、サービス指示・報告書など、日々の業務記録が審査対象になります。

  1. サービス提供責任者の役割強化

サービス提供責任者は加算の中心的存在です。適切な資格と経験を持つ人材を配置し、業務の質を高めるとともに、訪問介護員へのOJTやフィードバック体制も整えることで、加算ⅠやⅡの取得を目指せます。

  1. 地域との連携

特定事業所加算の上位区分では、医療や他の介護サービスとの多職種連携が評価対象となります。ケアマネジャーや訪問看護との情報交換、合同カンファレンスの実施など、積極的な地域連携が求められます。

実務で役立つチェックポイント

大阪府の特定事業所加算チェック表(こちらのPDF)では、各加算区分における要件をセルフチェックできる形式で整理しています。

このようなチェックリストを用いて、以下の視点で自事業所を定期的に見直すことが有効です:

  • 要件の未達ポイントはどこか?
  • 書類や記録は整っているか?
  • 実施内容に改善の余地はないか?

まとめ:特定事業所加算は「質の証明」

特定事業所加算は、単なる報酬アップのための手段ではなく、「事業所がどれだけ質の高いサービスを継続的に提供できるか」を国が評価する仕組みです。

加算Ⅰを取得するには高いハードルがありますが、それだけに取得できれば事業所の信頼性や職員のモチベーション向上にもつながります

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