就労継続支援B型

就労継続支援B型の工賃アップを担う目標工賃達成指導員配置加算について

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令和6年度報酬改定では、就労継続支援B型の評価の中で「工賃を上げる取組み」がこれまで以上に重視されました。その中心にあるのが「目標工賃達成指導員配置加算」と、新たに創設された「目標工賃達成加算」です。
今回は「目標工賃達成指導員配置加算」のねらいと算定要件、現場で押さえておきたいポイントを説明します。

目次

  1. 対象サービス名
  2. 算定加算単位(単位数)
  3. 「目標工賃達成指導員」とはどんな役割か
  4. 算定要件(人員配置と工賃向上計画)
  5. 工賃向上計画づくりのポイント
  6. 実務でよくあるつまずきとチェックポイント
  7. まとめ

1.対象サービス名

目標工賃達成指導員配置加算の対象となるのは指定就労継続支援B型です。

令和6年度改定後は、特に人員配置6:1以上の基本報酬区分(サービス費ⅠまたはⅣ)を算定している事業所を念頭に要件が設定されています。

2.算定加算単位(単位数)

利用定員 単位数/日
20人以下 45単位
21人以上40人以下 40単位
41人以上60人以下 38単位
61人以上80人以下 37単位
81人以上 36単位

以前は同じ加算が 89単位 等と比較的高めの設定でしたが、令和6年度改定で単位数は半分程度になった一方、人員配置要件が「6:1・5:1」として明確化された形になっています。

3.「目標工賃達成指導員」とはどの様な役割か

  • 各都道府県で作成される工賃向上計画に基づき、
  • 事業所としての工賃向上計画を自ら作成し、
  • 計画に掲げた工賃目標の達成に向けて、積極的に取組みを進める指導的な職員

具体的な取組みの例として、国や自治体の資料では、

  • 障害者就労施設等からの物品・役務の優先調達を活用した受注拡大
  • 地域の企業や農業との連携による新たな生産活動分野の開拓
  • ICT機器の導入等による生産性向上

などが挙げられています。

特別な資格は必須ではありませんが、「工賃をどう上げていくか」を中心に、事業所全体の方向性を引っ張っていく役割、というイメージを持っていただくと分かりやすいと思います。

4.算定要件(人員配置と工賃向上計画)

(1)人員配置の要件

  1. 目標工賃達成指導員を常勤換算で1.0人以上配置していること
  2. 職業指導員+生活支援員の総数が6:1以上
  3. 目標工賃達成指導員+職業指導員+生活支援員の総数が5:1以上

ここでいう「6:1」「5:1」は、利用者数を職員数で割った人員配置基準です。
例えば、平均利用者数が30人の事業所の場合、

  • 6:1以上 ⇒ 職業指導員+生活支援員が 5人以上
  • 5:1以上 ⇒ 目標工賃達成指導員を含めた3職種の合計で 6人以上

が一つの目安になります(実際には常勤換算の計算が必要です)。

(2)工賃向上計画の作成・届出

目標工賃達成指導員配置加算は、「工賃向上計画」とセットで考える必要があります。

  • 各都道府県が定める様式に沿って、事業所独自の工賃向上計画を作成すること
  • 多くの自治体では、指定権者または都道府県担当課に計画の提出(届出)が算定要件とされています。

なお、令和6年度改定では、新たに「目標工賃達成加算」が創設され、
「目標工賃達成指導員配置加算を算定している事業所が、工賃向上計画に掲げた目標工賃を実際に達成した場合」に評価する加算とされています。
現場としては、配置加算(仕組み作り)+達成加算(結果の評価)という2段階の仕組みになった、とイメージしていただくと理解しやすいと思います。

5.工賃向上計画づくりのポイント

工賃向上計画は、単なる「目標金額の宣言」ではなく、次のような項目をバランスよく整理しておくと、指導監査や集団指導でも説明しやすくなります。

  1. 現状分析
    • 平均工賃月額、作業種別ごとの売上・原価
    • 利用者の障害特性・通所日数の傾向
  2. 目標水準
    • 3年間でどこまで上げるのか(例:平均工賃月額○円アップ)
    • 「現実的かつチャレンジング」な水準になっているか
  3. 具体的な取組み内容
    • 受注先の拡大(自治体入札、企業からの業務委託 等)
    • 新商品の開発や付加価値向上策
    • 作業工程の見直し・ICT活用による生産性向上
    • 工賃の配分ルールの見直し など
  4. 体制・役割分担
    • 目標工賃達成指導員が担う役割
    • 職業指導員・生活支援員との連携方法
  5. 進捗管理の方法
    • 月次・四半期単位での工賃実績の確認
    • 目標とのギャップが出た際の見直し方法

各都道府県が公表している「工賃向上計画様式」や記載例をベースにしつつ、事業所の実情に合った内容に落とし込んでいくことが大切です。

6.実務でよくあるつまずきとチェックポイント

人員配置が日によって足りなくなる

  • 産休・育休、長期休暇、退職などで職員が減ると、常勤換算の計算上6:1・5:1を割り込むケースがあります。
  • 人員配置区分を変更した場合、配置加算や他の加算の要件にも影響が出るため、体制届・加算届の見直しを早めに検討する必要があります。

工賃向上計画が「絵に描いた餅」になっている

  • 計画を作って届出はしたものの、
    • 職員会議で共有されていない
    • 実際の生産活動の見直しにつながっていない
      といったご相談も多く聞きます。
  • 目標工賃達成指導員は、月次などのタイミングで工賃実績を職員・利用者と振り返る仕組みをつくっておくと、加算本来の趣旨に沿った運用になりやすくなります。

他の加算との関係を整理しきれていない

  • 地域協働加算、就労移行支援体制加算など、就労系事業には工賃や就労成果に関する加算が複数あります。
  • それぞれの加算で求められている「取組みの中身」と「評価の軸」が少しずつ違うため、
    • どの資料で何を説明するのか
    • どの記録をどの加算のエビデンスに使うのか
      を整理しておくと、運営指導への対応がスムーズです。

7.まとめ

目標工賃達成指導員配置加算は、

  • 目標工賃達成指導員を中心にした手厚い人員体制を整え、
  • 各都道府県の工賃向上計画に沿って事業所の工賃アップに本気で取り組む事業所を評価する仕組みです。

令和6年度改定では単位数が抑えられた一方、「目標工賃達成加算」という結果評価の加算も組み合わされ、工賃向上に向けたPDCAサイクルを回していくことがより一層求められる内容になっています。

実務上は、

  • 人員配置(6:1・5:1)の維持
  • 工賃向上計画の作成・届出と定期的な見直し
  • 他の加算・基本報酬との関係整理

といった点を押さえながら、無理のない範囲で加算取得を検討していただくのがよいと思います。

最終的な判断は、必ず指定権者・管轄自治体の最新資料や担当窓口で確認していただければ安心です。

(参考文献)

障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)

障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)

(参考資料)

令和6年度障害福祉サービス等 報酬改定における主な改定内容(令和6年2月6日)(厚生労働省)P31

就労継続支援B型に係る報酬・基準について≪論点等≫(令和5年10月11日)(厚生労働省)P7、P11

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