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高校生期の“卒業後”を見据えた進路準備をきちんと評価するため、令和6年度改定で「自立サポート加算」が新設されました。加算の趣旨は、学校・地域と連携して、相談援助や体験等を計画的に進めることです。今回は、こども家庭庁の通知に沿って「誰に・いつ・何をするのか」「どの程度の記録が必要か」「よく混同される他加算との違い」を、現場でそのまま使えるレベルに落として説明します。
目次
- 自立サポート加算の位置づけ
- 算定対象—学年要件と“弾力運用”の考え方
- 算定の主要要件—計画・支援内容・連携・記録
- 実務フロー—計画から実施・記録・振り返り
- ありがちな疑問と留意点(Q&A)
- 対象サービス名
- 算定加算単位
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自立サポート加算の位置づけ(新設の背景・趣旨)
令和6年度改定では、「将来の自立等に向けた支援の充実」が柱の一つとなり、放課後等デイサービスにおいて、卒業後の生活像を見据えた相談援助や体験等を計画的に実施した場合を評価するため、本加算が新設されました。こども家庭庁の改定概要は、学校等と連携しながら“進路の選択期”にある就学児に対して実施する支援を想定しています。
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算定対象—学年要件と“弾力運用”の考え方

対象となる児は、進路を選択する時期にある就学児で、高校2年生・3年生を基本とします。
一方、こども家庭庁Q&Aでは、発達や進路検討の状況により、高校2・3年生以外でも“同様の状況”にある場合の個別判断に触れた整理が示されています。画一的な学年縛りではなく、「進路選択の時期」かどうかを事業所が丁寧に記録・説明できるかが実務の鍵です。
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算定の主要要件(なにを)—計画・支援内容・連携・記録
こども家庭庁の資料から読み解くと、要件は大きく次の4点に集約されます。
① 自立サポート計画の作成
- 個別支援計画および学校での取組を踏まえて、児童が希望する進路を円滑に選択できるようにする自立サポート計画を作成します。
② 計画に基づく支援の実施
- 自己理解の促進(適性・障害特性の理解)
- 知識・技能の習得支援(進学・就労に必要な社会性、通学・通勤の模擬、職場・学校見学、体験等)
- 地域連携(必要に応じ、学校、商工会、企業等と連携)
これらを計画的に行い、支援の妥当性・安全性に配慮して実施します。
③ 学校等との連携
- 学校の教育的支援・移行支援の取組内容を把握し、相互に情報共有して重複や齟齬がないようにします(学校側との合意形成に時間を要するため、早期に打合せを行うことをお勧めします)。
④ 記録(エビデンス)の整備
- 自立サポート計画、実施記録、連携記録(校内会議・個別のやり取り・体験先との調整メモ等)を残します。
- こども家庭庁の周知資料は“計画的・連携的”であることを強調しており、「支援の意図→実施→振り返り(評価・次回計画)」の一連のPDCAの痕跡が重要です。
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実務フロー(いつ・どうやる)—計画から実施・記録・振り返り
- 初期把握(学期はじめ〜)
– 児童・保護者面談で卒後の希望や不安を聴取。学校から校内での進路支援の方針・既実施の取組を入手。 - 自立サポート計画の策定
– 個別支援計画に整合させ、3〜6か月程度の単位で到達目標と取組(相談援助・体験・外部連携)を明記。 - 支援の実施
– 「自己理解(適性・強み・配慮事項)」「知識技能の習得(通学・通勤模擬、社会的ルール理解、金銭管理等)」「体験(学校・企業見学、地域イベント参加)」などを計画的に実施。 - 振り返り・次期計画
– 実施結果を踏まえ、進路の意思形成や家族の理解、学校側の評価を総合して次期計画へ更新。 - 関係者への情報共有
– 学校、必要に応じて進路先候補、自治体等と合意的に共有。安全面・個人情報保護にも留意。
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ありがちな疑問と留意点(Q&Aより)
Q1:高校2・3年生でないと算定できませんか?
A:基本は高2・高3ですが、「進路選択の時期」にあると合理的に説明できる場合は、個別の状況に応じた運用がQ&Aで示唆されています。年齢・学年に拘泥せず、なぜ今が進路選択期なのかを計画・記録に明記しましょう。
Q2:学校との連携が不十分なまま実施するとどうなりますか?
A:本加算は学校等と連携し、計画的に行うことが前提です。学校での取組を踏まえる要件が示されているため、少なくとも情報入手・意思疎通の努力(記録)は不可欠です。
Q3:通所自立支援加算(通所経路の自立)との違いは?
A:別加算です。通所自立支援加算は通所経路の自立を評価(90日以内の集中的支援、60単位/回)で、対象・趣旨・算定ルールが異なります。自立サポート加算は進路選択支援の計画的実施がテーマです。
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対象サービス名
放課後等デイサービスのみが対象です。児童発達支援等は対象外なので注意してください。
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算定加算単位
100単位/回(月2回を限度)
対象は進路選択期(基本は高2・高3)。学校や地域の企業・団体等と連携し、相談援助や体験等を計画的に実施した場合に算定します。
まとめ(現場の運用ポイント)

- 対象は放課後等デイサービスのみ。通所自立支援加算(通所経路の自立)とは別物。
- 高2・高3を基本に、今が進路選択期である根拠を計画・記録に残す。
- 自立サポート計画を作成し、学校の取組を踏まえて、相談援助・体験等を計画的に実施する。
- 連携(学校・地域)と記録(計画→実施→評価→次期計画)が監査での要点。
(参考文献)
障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)
障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)
(参考資料)
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(令和6年2月6日)(厚生労働省)P88
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係) 改定事項の概要(令和6年4月1日)(こども家庭庁)P15
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等(障害児支援)に関する Q&A VOL.1 (令和6年3月29日)(こども家庭庁)P25