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生活介護は、障害のある方に対し、主として昼間の場での介護(身体介護・排泄・食事等)と創作・生産活動、社会参加を支える支援を提供するサービスです。その提供過程で、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)等の専門職が関与し、個別性の高い機能維持・改善や嚥下・コミュニケーション等の課題に計画的に取り組む場合に、「リハビリテーション加算」を算定できます。
この加算は、①医療系専門職の専門的評価と関与、②個別支援計画への位置づけ、③実施記録とモニタリング――の3点セットを満たすことで、通常の生活介護の提供に質の上乗せを評価する仕組みです。今回は生活介護の「リハビリテーション加算」について説明します。
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対象となるサービスおよび対象となる利用者
- 対象サービス:生活介護、自立訓練(機能訓練)
- 対象利用者:日常生活動作(ADL)や嚥下(えんげ)、関節拘縮(こうしゅく)、姿勢保持、上肢(じょうし)・手指機能、コミュニケーション等に機能的課題があり、専門職の評価・訓練・助言を個別計画に基づいて受ける必要がある方。
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加算の趣旨(なぜ評価されるのか)
- 生活場面に埋め込まれたリハビリへの評価:機能訓練そのものだけでなく、食事・更衣・移乗・コミュニケーション等の「日中活動の文脈」に根差した取り組みを評価される。
- チーム支援の強化に対する評価:医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士と生活支援員・看護職員が情報共有し、支援方法の標準化と継続性を高める効果を評価される。
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算定単位数・対象となるご利用者様
- リハビリテーション加算(Ⅰ):48単位/日
対象者:算定要件を満たし頸髄損傷(けいずいそんしょう)による四肢の麻痺その他これに類する状態にある者
- リハビリテーション加算(Ⅱ):20単位/日
対象者:算定要件を満たしたリハビリテーション加算(Ⅰ)算定以外のご利用者様。
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算定要件
- 医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士その他の者が共同して、ご利用者様ごとのリハビリテーション実施計画を作成していること。
- ご利用者様ごとのリハビリテーション実施計画に従い医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が指定生活介護等を行っているとともに、ご利用者様の状態を定期的に記録していること。
- ご利用者様ごとのリハビリテーション実施計画の進行状況を定期的に評価し、必要に応じて当該計画を見直していること。
- 指定障害支援施設等に入所するご利用者様について、リハビリテーションを行う医師、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、看護師、生活支援員その他の職種の者に対し、リハビリテーションの観点から、日常生活上の留意点、介護の工夫等の情報を伝達していること。
- ④のご利用者様以外のご利用者様について、指定生活介護事業所等の従業者が、必要に応じ指定特定相談支援事業者を通じて、指定居宅介護サービスその他の指定障がい福祉サービス事業に係る従業者に対し、リハビリテーションの観点から、日常生活上の留意点、介護の工夫等の情報を伝達していること。
5.個別支援計画への位置づけ
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- アセスメント→目標→プログラム内容→頻度・時間→生活場面への展開を個別支援計画(区分:リハビリ関連)に明記する。
- サービス担当者会議・モニタリング(定期)で効果検証と次期目標の更新を行う。
6.記録・実施の証跡
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- 評価票・訓練計画書・実施記録・家庭へのフィードバック(口腔・嚥下やポジショニング指導を含む)。
- 事故防止・リスク管理(誤嚥・転倒・疼痛)の観点も合わせて文書化する。
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実施の流れ(現場でのオペレーション)
- 初期評価(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が姿勢・可動域・筋緊張・嚥下(えんげ)・コミュニケーション等を評価)
- ゴール設定(例:食事姿勢の安定/移乗自立度/上肢操作性/構音・飲み込みの改善)
- プログラム設計
- 例:嚥下体操→座位保持→食事介助の段階化、スプリント・自助具導入、AAC(絵カード等)の試行 など
- 生活場面への落とし込み(職員全体で統一手順を共有)
- モニタリング(月次等:指標を数値化・動画記録で変化を可視化)
- 計画更新→家族・関係機関連携
8.書類・エビデンスの整え方(監査で見られるポイント)
- 評価票:FIM等の指標に限らず、事業所様式でも可だが項目の網羅性(ROM・筋緊張・嚥下・姿勢・コミュニケーション等)を確保。
- 訓練計画書:頻度・時間、実施者(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、生活支援員)、場所、安全配慮、生活場面での手順を記載する。
- 実施記録:日ごとのサマリ+週/月のモニタリング。写真・動画は同意の上、保管ルールを定める。
- 家族・通所先・医療機関連携:情報提供書の写し、担当者会議の議事要旨。
9.よくある質問
Q.言語聴覚士の言語訓練は「会話練習」だけでも算定可能か?
A. 目的・評価・計画に基づき、コミュニケーション手段の獲得や嚥下機能に係る専門的関与が明示されていれば可。但し雑談は不可。
Q.外部の言語聴覚士が月1回だけ来所して助言する形でも算定可能か?
A. 頻度・関与の実効性が要件を満たすこと(継続的モニタリング・計画反映・職員研修等の実効性)が必要です。
Q. 医療リハと時間帯が重なる場合はどうするのか?
A. 役割分担と重複請求の回避を明確にすること(生活場面訓練の位置付けを記録)。
10.加算導入のチェックリスト
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等との契約形態・勤務表・来所記録が整っているか?
- 初期評価票が作成済み、個別支援計画に目標・頻度・時間が反映されているか?
- 実施記録・モニタリングの流れが月次で回っているか?
- 併算可否の確認(同一日の看護・口腔・栄養などとの関係)
- 医療機関連携(情報提供書・役割分担)をファイル化する。
- 事故防止・同意書・画像の取り扱いルールが明文化されているか?
(参考文献)
障害者総合支援法 事業者ハンドブック〈報酬編〉(中央法規)
障害福祉サービス 報酬の解釈(社会保険研究所)
(参考資料)