障害福祉サービス全般

障がい福祉事業者が介護タクシー事業に参入する際のポイントとは? ~許可取得の流れと運用モデルについて大阪府を例に解説~

【はじめに】

障がい福祉サービスの現場では、利用者の通院や買い物、余暇活動など、施設外での移動に対する支援ニーズが年々高まっています。こうしたニーズに対応する形で、介護タクシー(福祉輸送限定の一般乗用旅客自動車運送事業)を導入する障がい福祉事業者が増えつつあります。

今回は、大阪府を想定エリアとしながら、障がい福祉事業者が介護タクシー事業に参入するメリットや許可取得の流れ、そして具体的な運用モデルまでを詳しく解説します。

 

【第1章】なぜ今、障がい福祉事業者が介護タクシーに注目するのか?

  • 通院・外出ニーズの多様化 障がいのある方々にとって、通所先だけでなく医療機関や役所、スーパーなどへも安全に移動できる手段の確保は生活の質に直結します。施設の送迎車両では対応できないケースにおいて、介護タクシーが役立つ場面が増えています。
  • 訪問系サービスとの連携可能性 移動支援や通院等乗降介助といった訪問系サービスを展開する事業者にとって、車両を用いた輸送サービスを一体的に提供できる体制は、サービスの質向上と運営効率化につながります。
  • 経営の多角化とリスク分散 福祉事業は制度改正等の影響を受けやすいため、既存事業とのシナジーを活かした収益源の多角化は重要な経営戦略の一つとなります。介護タクシー事業は比較的少額の初期投資で参入可能なため、福祉事業者にとって現実的な選択肢となっています。

 

【第2章】実際の活用例・事例紹介

  • 大阪府内の生活介護事業所による通院支援 重度障がい者の通院支援を目的に、福祉輸送限定のタクシー許可を取得。既存の職員が運転・介助を兼務し、事業所の信頼性も高まった。
  • 放課後等デイサービス事業所が外出支援に活用 長期休暇中のレクリエーション対応や、保護者による送迎が難しい家庭への支援として介護タクシーを導入。放課後のサービス外活動にも柔軟に対応可能となった。
  • 居宅介護+タクシーのセット運営(東京都の事例) 通院等乗降介助と介護タクシーを組み合わせ、移動から受診・帰宅まで一貫したサポートを提供。利用者の安心感が向上。

 

 

【第3章】介護タクシー(福祉輸送限定)許可取得の流れ

■ ステップ1:事前確認・要件整理

  • 法人格(株式会社、NPO法人など) ※すでに障がい福祉事業を運営している法人であれば、新たに法人格を取得する必要はありません。ただし、事業目的に「旅客自動車運送事業」が含まれているか、定款を確認しておきましょう。
  • 定款に旅客自動車運送事業の記載が必要
  • 運行管理者・整備管理者の確保
  • 車両要件(リフト付き・スロープ車など)

 

 

■ ステップ2:近畿運輸局(大阪運輸支局)への事前相談

  • 提供エリア、対象者、サービス内容の明確化

 

 

■ ステップ3:許可申請書の作成・提出

  • 登記簿謄本、車検証、損害賠償保険証明などを添付
  • 運行管理体制・資金計画の明示
  • 運賃料金認可申請も同時に行う

 

 

■ ステップ4:審査・ヒアリング

  • 記載内容の整合性や事業の継続性が審査される

 

 

■ ステップ5:許可取得・運行開始

  • 緑ナンバー取得
  • ドライバー研修(セーフティドライバー講習等)
  • 表示義務(社名・事業許可番号など)への対応

 

 

【第4章】障がい福祉事業所が行う介護タクシーの運用モデル

 

【簡易モデル図】

障がい福祉サービス事業所  

施設内送迎(白ナンバー車)    通院・外出支援(緑ナンバー車/介護タクシー)     

 訪問介護と連携(通院等乗降介助など)

 

※ポイント:

  • 白ナンバーはあくまで無償の施設送迎用
  • 緑ナンバーは有償の個別送迎や外出支援用   → なお、緑ナンバー車であっても無償の施設送迎を行うことは可能です。ただし、有償・無償を問わず運行日誌や点検記録の整備など、運行事業者としての管理義務が課される点に注意が必要です。
  • 訪問介護と組み合わせて一体運用も可能

 

【第5章】導入前に押さえておきたい注意点

  • 許認可の有無 「白ナンバー車で有償送迎」は原則違法とされており、緑ナンバー取得が不可欠です。定款の記載や保険加入など、行政手続きのハードルはありますが、法令順守の体制整備が信頼性にもつながります。
  • 運行体制の整備 日常の送迎と、外出支援などの介護タクシー業務をどう区別し、職員をどう配置するかがカギになります。職員の教育やダブルワーク体制の見直しも必要です。
  • 継続的な管理義務 運行日誌や点検記録、事故報告など、運行事業者としての管理業務が求められます。外部委託も視野に入れた体制構築が望まれます。

 

【まとめ】

介護タクシー事業は、障がい福祉サービスと親和性が高く、利用者支援の幅を広げる有効な手段となります。ただし、参入には法的要件や運用管理体制の整備が必要です。自事業所の体力や職員体制をふまえたうえで、まずは情報収集や運輸支局への相談から始めてみてはいかがでしょうか。

本記事が、介護タクシー導入を検討する福祉事業者様の一助となれば幸いです。

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