令和6年度の法改正により制度上創設された「就労選択支援」は、令和7年10月から実際のサービス提供が始まる予定の新たな障がい福祉サービスです。今回は、大阪市においてこのサービスの指定を受けたいとお考えの就労系事業者様向けに、指定申請手続きの流れや注意点、そして特徴的な「有識者会議」について説明します。
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就労選択支援とは?
就労選択支援は、障がいのある方が自らの適性や希望に応じて、自立した就労の選択肢を主体的に選べるよう支援するサービスです。対象となるのは、以下のような多様な就労形態です。
- 就労移行支援
- 就労継続支援A型・B型
- 一般就労(企業での直接雇用)
- 在宅ワークや地域活動支援など
一定期間内に、アセスメント、職場見学、体験実習などを通して利用者の適性を把握し、次に進むサービスや働き方を選択するための「前段階の支援」として機能します。
この支援の創設は、障がい者の多様な働き方や自己決定を支援するという理念に基づくものであり、既存の就労系サービスとの連携や接続が極めて重要です。
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大阪市における指定申請の流れ
大阪市では、「障がい福祉サービス事業者等指定申請の手引き(就労選択支援)」に基づき、以下のようなスケジュールで申請が進められます。
(1)事前協議(3か月前末まで/郵送)
指定を希望する月の3か月前末日(消印有効)までに、必要書類を大阪市福祉局へ郵送することで事前協議を行います。
来庁の必要はありません。事業所の体制、職員構成、支援方針、施設整備などについて市が確認を行い、後日結果が通知されます。
(2)申請面談の予約と実施(2か月前~)
事前協議で問題なしとされた場合、大阪市から面談予約に関する連絡があります。申請者自身が改めて電話等で面談日時を確定し、面談時に必要書類一式(紙媒体)を提出する流れとなります。
大阪市では電子申請には対応しておらず、紙媒体での提出が必須です。
(3)主な申請書類
- 指定申請書
- 運営規程
- 体制届出書
- 就労選択支援計画書のひな型等
- 職員配置表、職員の資格証明書・経歴書
- 賃貸契約書、施設平面図
- 他事業所との連携体制を示す資料 など
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有識者会議による審査制度
就労選択支援の指定においては、他の障がい福祉サービスと異なり、「有識者会議」という第三者による評価制度が導入されています。
(1)目的
この制度は、形式的な基準の充足だけでなく、支援の質や実効性を専門家の視点から審査することを目的としています。
(2)構成
- 医療・福祉分野の専門家(医師、社会福祉士など)
- ハローワークや他機関の就労支援実務者
- 障がい当事者や家族会の代表
- 行政担当者 など
(3)審査観点
審査項目 | 内容 |
支援内容の妥当性 | アセスメントや実習の流れが明確か |
地域連携 | 他事業所や企業との協力体制 |
職員の資質 | 適切な経験・資格・人数があるか |
利用者中心の視点 | 本人の希望を重視した支援方針か |
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他のサービスとの関係と併用の可否
就労選択支援は、他の就労系サービスへの移行を前提とする準備段階の支援です。以下のような併用制限があります。
- 他の就労系サービス(就労移行支援・A型・B型等)との同一月併用は原則不可。
- 医療、相談支援、移動支援等との同一日併用は、報酬が重複しない限り可能(市町村判断)。
- 放課後等デイサービスは18歳未満対象のため、併用不可。
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指定申請に向けた実務ポイント
項目 | 検討すべき点 |
準備期間 | 指定希望月から逆算して最低3か月以上前から準備開始 |
施設整備 | 面談室、実習体験スペース、相談スペースなどの確保 |
職員体制 | 多様な支援経験のある職員配置と養成研修の修了状況 |
地域連携 | 他の就労系事業所や企業との協力体制の構築と記録 |
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よくある質問(FAQ)
Q:職員に必要な資格はありますか?
→ 就労選択支援では以下の要件があります:
- 就労選択支援員
「就労選択支援員養成研修」の修了が必要です。
その前提として、
1. 「障がい者就労支援に関する基礎的研修」の修了
または
2. 就労支援分野での通算5年以上の実務経験
のいずれかが必要です。
※令和9年度末までの経過措置として、基礎的研修のみでも「みなし配置」が可能。
- 管理者
福祉・介護・医療分野での経験や、サービス管理責任者研修の修了が求められます。
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まとめ
就労選択支援は、障がいのある方が主体的に「どのように働くか」を選ぶための支援を行う、新たな障がい福祉サービスです。
大阪市では、郵送による事前協議(3か月前末まで)と、予約制の申請面談(2か月前以降)という二段階方式で手続きが進みます。電子申請には対応しておらず、すべて紙媒体での提出が求められます。
新規指定にあたっては、有識者会議による審査もありますので、早期の準備と実効性のある支援体制の構築が不可欠です。まずはスケジュールを逆算し、余裕を持った対応をおすすめします。
【参考資料】