障害児通所支援

既存建物を児童福祉施設用への用途変更に係る手続きについて

はじめに

児童発達支援や放課後等デイサービスなど、障がい児を対象とした福祉サービスを始めるにあたり、「既存の空き家やテナントを活用したい」というご相談をよくいただきます。
ただし、こうした建物をそのまま使用できるとは限りません。建築基準法上の「用途変更」に該当する場合、申請や届出、建物の改修などが必要になるため、事前の確認が極めて重要です。

今回は、建築基準法に基づく用途変更の考え方や手続き、関係官公庁との調整、建築士との連携のポイントを行政書士の視点から解説します。

 

1.「用途変更」とは?

建築基準法における「用途変更」とは、建物の使用目的を変更することを指し、たとえば「住宅」や「事務所」だった建物を「児童福祉施設(放課後等デイサービス等)」として使用する場合がこれに該当します。

用途区分が異なる変更に該当するかどうかは、建築基準法施行令 第1条の3に基づく13の用途区分をもとに判断されます。
児童福祉施設は「集会場、福祉施設等」に分類され、住宅や事務所、倉庫などとは異なる用途と見なされます。

 

2.確認申請が必要となるかどうかの判断基準

児童福祉施設への用途変更が**「建築確認申請」の対象となるかどうか**は、次の2点により判断されます。

建築確認が必要となるケース(建築基準法第87条)

  • 用途の区分が異なる
  • かつ、用途変更部分の床面積が200㎡を超える

🔹 200㎡以下の場合は原則として確認申請不要ですが、自治体によっては「確認対象外申出書」などの届出を求める場合があります。

 

事例での比較

元の用途 変更後の用途 面積 建築確認の要否
住宅 放課後等デイサービス 150㎡ 不要(届出が必要な場合あり)
倉庫 児童発達支援 250㎡ 必要(確認申請)
事務所 放課後等デイサービス 80㎡ 不要(自治体へ申出が必要な場合あり)

 

3.用途変更の手続きフロー

ステップ①:建築士による現地調査と適合確認

まずは、一級または二級建築士による現地確認を行い、耐震性・避難経路・採光・バリアフリー・消防設備などの観点から現行法に適合するかを確認します。

 

ステップ②:官公庁への提出(面積と用途に応じて)

面積 必要な手続き 提出先 必須書類
200㎡超 建築確認申請 各市町村建築指導課または民間確認検査機関 設計図書、構造計算書など(建築士作成)
200㎡以下 確認不要(ただし届出を求められる場合あり) 各自治体建築指導課 用途変更確認対象外申出書 等

例:吹田市や大阪市では、確認対象外申出書の提出が制度化されています。

 

4.福祉施設開設のための整備ポイント

児童福祉施設の指定を受けるには、建築基準法だけでなく児童福祉法や障害者総合支援法に基づく施設基準の適合も求められます。

主な整備内容:

  • 指導訓練室・静養室の確保(面積要件あり)
  • 事務室・トイレ・手洗い場の設置
  • バリアフリー構造(段差解消、スロープ等)
  • 火災報知器・誘導灯・消火器などの消防設備
    ※消防署との協議も必須です

 

5.関係機関と必要な調整

児童福祉施設の開設にあたっては、以下の機関と連携が必要です。

機関 役割 手続き例
建築指導課(市町村) 用途変更の確認・届出 建築確認申請または申出書提出
福祉主管課(府・市) 施設指定・運営指導 開設指定申請、実地指導対応
消防署 防火設備の確認 設備設置届、立会検査など
保健所(必要に応じ) 衛生環境の確認 トイレ・給排水の基準確認など

 

6.行政書士・建築士・消防設備業者の連携が成功の鍵

行政書士は、施設の指定申請や法人設立、事業計画書作成を担当し、建築士は建築法令上の適合調査・設計・図面作成を担当します。さらに消防設備業者とも連携しながら、設置義務のある設備を整えていきます。

特に用途変更が必要な場合、「建築士+行政書士+消防業者」のチーム体制で動くことで、スムーズな審査通過と開設が可能となります。

 

まとめ:事前確認と専門家連携でスムーズな開設を

児童福祉施設の開設において、建物が法令に適合しているかは極めて重要です。
**「この建物で開設できるかどうか」**という不安がある場合は、まず建築士と連携し、用途変更が必要か・確認申請が要るのかを事前に見極めましょう。

そのうえで、行政書士と協力して必要書類や福祉主管課への指定申請もスムーズに行うことが、開設までの近道です。

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